No. 1968トレイルを安全に走るために
5日前に走った上州武尊スカイビュートレイルは正直なところレース前から恐怖心がありました。同じような恐怖心は過去三回感じています。
最初は初めてトレイルを走ったハセツネ30Kです。山で熊やマムシに襲われないか?崖から落ちはしないか?など怖かった。
次は初めて夜間に走るレースとなったハセツネです。まだランニング歴も短い時なので分からないことだらけです。一部試走にもいきましたが暗闇の山道を走るという行為だけでもう恐怖心に支配されてしまいました。
そして第一回UTMFにエントリーした時です。ロードなら100マイル以上走ったことは複数回あったけどトレイルの100マイルは別格であり、また山に不慣れな私が走って重大事故に合わないだろうか?また第一回大会であり直前までコースが決まらないのも不安であった。いま考えて見てもそれまで走ったトレイルの最長距離はハセツネの71.5キロでありその二倍以上のレースは無謀だったと思う。(当時はトレイル・ロード問わず100キロ以上の完走が参加資格であった。)
UTMFを完走したことで、その後走った110キロの信越五岳や75キロの伊豆トレイルなどは特に不安にはならなかった。
今回の上州武尊スカイビュートレイル66キロは信越五岳などより短いレースながら不安に感じていた理由は第一回大会でありコースがよく分からないと言うこと、鎖場など本格的な登山の区間が存在すること、そして熊が非常に多い場所であることなど考え始めると徐々に恐怖に支配されました。
ただ不安や恐怖心を持つことは大事なことだと思っています。なぜならそのレースやコースを甘く見ないから。。未知のことにチャレンジするのだから不安で当然なんです。
ロードレースなら限界まで自分を引き出して突っ込むレースはありだと思います。私はそんなレースは出来ないけど自己ベストを狙うなら少々無理しないと昨日までの自分に勝てません。
ただトレイルは限界まで自分を引き出したら急激にリスクは高まります。ロードレースのリスクと違ってトレイルレースのリスクは容易に死を想像できるくらいのリスクであるから限界まで自分を引き出す方は覚悟のうえで行っていると思います。
もちろんリスクが高くても行かねばならない時はきっとあるはずです。
人生を賭けている人
人生を変えたい人
いるはずです。。。
しかし私は絶対にケガをしないでゴールするのが第一優先なのでそんな走りは出来ません。下りをスキーのモーグルのようにガンガン走ることだって出来ます。またしたい気持ちもあります。だけど危険と思う場所ではしません。ここなら万が一転倒してもたいしたケガはしないと思った場所しかスピードを出しません。
詰まらない人だな~
って思う人もいるでしょうが、それが私のスタンスです。
そのため過去かすり傷はあるけど動けないような事態に陥ったことはありません。過去ロード、トレイル合わせて110レースくらい走って一回もリタイアがないのは非常に慎重であり事前に危険の芽を潰しているからです。
前置きが長くなりました 笑
今回のレースのために準備したこと、気をつけたことを列挙します。
【知らないコースでも自分なりに可能な限りイメージする。】
私は第一回大会のように情報がないレースでも地図や高低図やネットからの情報など可能な限り集めてイメージします。区間タイム等イメージ出来るば無理しないで走れるし、焦りがでないと思います。
毎回こんなの作っています。でもこんなのを作ることでケガするリスクは減少します。なぜなら高低図からこの下り傾斜はかなりキツイから危なそう。だから少しゆっくりのペース設定にしよう。って思えば無理しません。知らない人は下りでタイムを稼ごうと制御できないスピードで走ってケガします。
【ゴールで出し切らない】
賛否両論あると思うけど私はゴールしてもまだ10キロや20キロ走れるくらいの余裕を残してます。今回もラスト10キロはかなり頑張ったけどゴールして余裕はありました。ロードならギリギリまで追い込んで倒れ込むようにゴールするのも有りかもしれません。でもトレイルでそれをやってはダメです。何故ならコースから外れて迷ってしまうことはあるし、転倒して動けなくなることだってある。山で動けなくなったら生命の危機に瀕することもあるし、周りにも大きな迷惑をかける。何が起こるか分からないのがトレイルなのだから私は常に余力を残してます。体力的にも精神的にも。。。
気持ちに余裕があるからケガも未然防止出来るのです。
【リスクを潰していく】
自分自身コースで起こりえるリスクをイメージしてスタート前に対処できることは潰していく。例えば砂利道が多いなら捻挫しやすいとイメージする。
そうしたら足にテーピングをしっかり巻く。
今回は急登があるのを高低図から読み取っていたから、脹ら脛を使う動きを多様すると想像し脹ら脛をテーピングで保護しました。そしてその上からゲイターでさらにサポートしました。
膝のテーピングは膝にくる衝撃を緩和するための効果もありますがトレイルでは岩で擦ったり万が一転倒した際にもある程度の保護になります。
ホントは肌を出さないタイツが良いと思いますが私は嫌いなのでハーフタイツとゲイターを履いて露出している膝はテーピング使ってます。またタイツを履かないならゲイターは必須です。特に今回のように笹や岩が多いコースはないと傷だらけになります。
また熱中症や脱水症のリスクを潰すためにどのくらいの水が必要かも事前に予測します。そしてレース中は飲みすぎることなく、また喉が乾くことなく少しづつ喉を潤していきます。レース中に暑いと思えば頭や首筋に水をかけて冷やしたりもする。
脱水症と同じくらい怖いのはハンガーノックいわゆるガス欠です。第一回大会だからエイドでどれだけ補給できるか分からない。そこでエイドでは基本十分な補給は出来ないと考えて行動食を持ちました。今回はアスリチューンをベースに用意しました。
今回のような沢登りのあるレースは足がぐちゃぐちゃになり靴ずれや水膨れ、そして爪を痛めてレース中に走るのがきつくなることが想定されます。そこでアウトドライ(防水)のバハダで行こうとしたが中に溜まった水の排水が悪いと判断し、通常のバハダで走りました。
新品のシューズがこんな風になってしまいました。。。
そしてソックスは濡れても良いようにメリノウールにしました。
その他小さいことだけど足の爪をしっかり切る。足の指の間や股、脇の下にはジェルを塗るなどし摩擦を抑えるとともに乳首にはテーピングを貼ることでレース中に集中できなくなるような事態を潰していった。
その他装備関係にはストレスのないものを使うようにしています。
サロモンのザッグは気に入っているが私には若干大きく肩紐を締めると紐に皺がよったりして気になったので次回は縫い付けて詰めるなどして対応します。
また私は必須と思っているが使ってない方がいる装備があります。
帽子(バンダナ)とサングラスです。帽子は絶対に必要です。何かがぶつかった時に直に頭にぶつかるのと帽子がクッションになるのではダメージは違います。またスズメバチに刺されたことはないけど帽子を被っていれば頭を保護できます。ただ気をつけねばならないのは急登で足下を見つめながら歩いているとツバで木の枝が見えずに何回か頭をぶつけました。スピードが出てないからケガをするほどではないけど結構痛かったです。
またサングラスは見え方が変わるので私も嫌いだけどトレイルではかけるようにしています。何故なら斜面から小石が落ちてくることはあるし、前の人が跳ねた枝が顔を襲うこともある。目を怪我したら下山することも困難になりかねないから大事なことです。
透明の明るいレンズを使えば薄暗いトレイルでも大丈夫です。
そしてほとんどの区間で使ったのが滑り止め付きの軍手です。暑くなった時間帯のロードでは外したがトレイルでは付けた。軍手をしていれば万が一転倒してもダメージは軽減する。
【レース中に気をつけたこと】
固い笹の茎
今回のコース全般において笹の茂みが非常に多い。笹の茂みを切り開いてコースを作っているので刈った笹は固く切り立ち角度によってはトレランシューズの底を踏み抜くし、サイドアッパーなんて簡単に突き破ってしまう。またそんな場所で転倒したら身体に刺さってしまう。そこで危ないと思った場所は慎重に進んだ。走れる下りでも笹が切り立っているなら歩いて下った。
鎖場(ハシゴ)
上りに5個所、下りに2箇所ある鎖場は怖かったので慎重に通過した。しかしハシゴがなくて鎖を頼りに垂直に近い切り立った岩を登っていくのは私には厳しかったのでハシゴは助かりました。
沢登り
レース前日の説明会で初めて知ったのだけど本格的な沢登り区間が800mほどあります。ここは膝まで水に使ったり、大木は岩を越えたり藪の中を進んだり道なき道を進んだ。浮いてる石には乗らないよう小股で腰を低くして動いた。また転倒したら固い岩に頭を打ち付けることになるので絶対転倒しないようにバランスを取りながら進んだ。
渋滞後の下り
私の位置で50分の渋滞となったがイライラすることなく仕方がないと思うようにして待った。そしてハシゴを下りてから前に追いつこうとスピード全開で駆け下りる人が多かったがロスしたタイムを取り返そうとはしないで淡々と走った。何人か転倒したり足を捻った人がいたけど自分が制御できるスピードを超えて走ればリスクは高くなってしまう。気持ちは分かるがこんな時ほど冷静になって走らないといけない。
また今回66キロの渋滞に巻き込まれた120キロの選手が前のランナーに追いつこうとスピードを上げて走り、登山者に接触したがそのまま行ってしまったと主催者が発表している。さいわいケガはなかったようだが有り得ない行為である。トップグループを走るランナーであるから渋滞により前方との差が開くことへの焦りや怒りは分からないでもないが、その行為は許されない。またトップグループが渋滞に巻き込まれるようなコース設定についても問題はあると私は思うし、主催者サイドでも認識しているので来年は何らかの対応をはかるでしょう。
熊
このコース全般に熊多発地帯であるが、その中でも後半のパートは特に危ないらしい。熊鈴はもちろんつけたが、他のランナーと一緒に話しながら走ったり、また前後に見える範囲で途中までは走った。途中から一人で走ることが多くなったが不思議と怖くはなかった。たくさんのランナーが通り過ぎているので熊も出てこないだろうと感じたのである。
その他、五感を集中して危険を事前に察知して対応した。集中すると下りである程度スピードに乗っても怖くはないし転ぶかもなんて意識もない。終盤は気持ちよく走りました。
結果として転倒することはなく、倒木や岩を越える時に足を擦った擦り傷が若干あるだけで完走することが出来ました。
トレラン経験の長い人には当たり前のことでしょうが、誰に学んだわけでもなくトレランをする中で自分自身気づいたことですのでこれからトレランを始める人には参考になるとまとめました。
もちろんコースによっては違う危険もあるでしょう。大事なのは【危険】を予測する力でしょう。
ありがとうございます。トレラン初心者ですが、大変参考になりました。